第2.5話

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大阪府堺市。十月。 通称<大刑>と呼ばれる大阪刑務所は西日本最大の規模を誇り、現在も約二千七百人が収監されている。  山田浩二は覚醒剤取締法違反で逮捕され、二年三ヶ月の刑期を終え、出所した。山田は以前にも傷害致死で四年近く岐阜で服役した事がある。前刑終了後、五年未満だったことから累犯とされ、薬物使用での逮捕は初めてであったが、執行猶予無しの実刑判決となった。 久しぶりの塀の外の空気。山田は大きく、伸びをすると、ペッと唾を吐き捨て大刑の塀沿いを歩いていった。時給ウン十円で稼いだ金があるが、三万ほどしかない。 「甘いもの、酒、それに・・・・女」 大刑すぐの堺市駅前のコンビニでビッグプリンとエクレア、そして缶ビールを買った。駅前の公園に入り、ベンチを見つけると、貪るように口の中に放り込んだ。 「うぅ・・・うまい。うますぎだろ。」 たまらなかった。信じられないような甘さが舌を襲い、おもわずガッツポーズをしてしまった。 両親は岐阜で出所した時は迎えにきてくたが、シャブで捕まり再び収監されると、元から神経質だった父親が自殺し、母親からは絶縁の手紙。そこには怒りと俺を産んだことへの後悔だけだった。
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