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あなた、朝食の支度をしますからね。座っていて下さい。そんなに気を使っていただかなくて結構ですからね。と、女は自分の夫に声をかける。
しかし、言われた夫は座って待とうとはせず、女の横を後ろをそのまた反対の横を、往ったり来たりして手伝いをする。しかしながら実際のところ彼の手伝いのおかげで支度は一歩進んでは二歩下がるといった様子だ。
これはきっと私を思ってのことだろうから悪意に捉えてはダメ。ボケてしまったこの人を私が支えなきゃ。そんなことを小声でこぼしながら朝食を支度する。
夫はそんな妻を横目で見ながら、なにが支えなきゃ、だ。息子夫婦が旅行から帰って来るまでの後二日、このボケたバアさんの世話と後始末をせにゃならん。いっそ本当にボケてしまいたいよ。と、心中毒づきながら、本日五度目の朝食を阻止すべく、妻の横を後ろをと動き回る。
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