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「私は逆井さんがいいと思います」
後ろのほうの席で、誰かが言った。
さすがは夕花ちゃん。ファーストインプレッションで「クラスの顔」に推薦されるなんて、すごい。
「理由を聞かせてくれる?」
「はい。凛花学園のクラス委員はみんなをまとめる力が必要です。その点、逆井さんは入学式のときからみんなに話しかけられても上手に対応なさってましたので、まとめ役をお任せできるかと」
上手に対応なさってましたので。と聞いて八千恵は思わず首を傾げてしまう。
夕花ちゃんは見た感じ、親しくない人と話すのはそんなに得意じゃないような気がするのだけれど。
「はい、それでは逆井さんにまず一票」
そんな八千恵の心の声は誰に届くわけでもなく、一年一組の夕花ちゃん推しはどんどんヒートアップしていく。
「私も逆井さんがいいと思います」
「なんといっても寮生だし」
「それに美人だし」
かっこいいし、大人っぽいし、とだんだんクラス委員の適正とは関係のない、夕花ちゃんを賞賛する声が飛び出した。
「はいはいそこまで。みんなが逆井さんのことが大好きなのはよくわかったわ。数だけ見ればもう決まったようなものだけど、逆井さんはどうかしら? 凛花のクラス委員は本当にいろいろと大変だけど、やってくれる?」
「私は別に構いません」
わあっ、と一部の女子たちの黄色い声が上がる。
これで夕花ちゃんは一年一組のクラス委員に決定だ。推薦したみんなは大喜びである。
……でも、八千恵は心からおめでとうと言えない気分だった。
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