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確かに夕花ちゃんはクラスを代表する優等生だけど、クラス委員の仕事に向いているかどうかはちょっと微妙だ。なんだかすっきりしない。
夕花ちゃんはなんでもなさそうに言ったけど、人前でしゃべったり、みんなをまとめたりするのが得意だとは思えないのだ。
みんな、本当に夕花ちゃんが適任だと思っているのかな。
八千恵は、この空気に賛同できない自分がいることを確かに感じていた。
「ではクラス委員は逆井さんにお願いしましょう。逆井さん、前に出て、このあとの進行をお願い。それから、できれば推薦してくれたみんなに何か一言」
「わかりました」
夕花ちゃんは立ち上がり、教卓の前に立ち、深々と頭を下げた。
黒板に『委員長 逆井夕花』と、丁寧な文字で書き記し、相変わらず鉄壁の無表情で、目の前のクラスメイトたちにこう言った。
「このたびは推薦どうもありがとう。逆井夕花です。人前に出て話すのも、大きな声を出すのも苦手なので、適正があるとも、仕事をうまくできるとも思いませんが、よろしくお願いします」
うわ、バッサリ。
夕花ちゃんの遠慮も配慮もないコメントで、その場の空気が凍り付いた。
これっぽっちも笑わず、頑張りますとも精一杯やりますとも言わず、「クラス委員なんて私にはできない」とハッキリ言ってしまったのだ。
これでは推薦した人も、それに賛同して意見を言った人も、いい気持ちにはならない。
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