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こんなときは大人が助けてくれる。というのが通用しないのが凛花学園である。
上野先生は、夕花ちゃんの発言に対して何も言及しなかった。
無言で立ち尽くす夕花ちゃんと、拍手どころかコメントもできずにただ口をあんぐり開けているクラスメイトたちを見比べて、この状況がどうなるのか、誰がどうするのかを待っているという感じだった。
「では、副委員長を決めたいと思います。上野先生、どのように決めるかは私が考えてもよろしいのでしょうか?」
「もちろん。全て委員長にお任せするわ」
「では、先ほどと同じように立候補や推薦にしましょう。みなさん、まだクラスでの交流が少ないので難しいとは思いますが、副委員長に適任だと思われる人を推薦してください。なお、発言は挙手の後にお願いします。もちろん、推薦する正当な理由も添えて」
誰も手を挙げなかった。
夕花ちゃんは黒板に『副委員長』とだけ書いて、みんなの反応を待った。
夕花ちゃんは、みんなを困らせたいわけではない。
みんなも、夕花ちゃんを困らせたかったわけではない。
でも、この長い沈黙の中で誰かの挙手を待っている夕花ちゃんは、明らかに困っている。それは八千恵だけじゃなく、他のみんなもわかっているはずだ。
(わたしがなんとかしなきゃ)
気づけば八千恵は、右手をまっすぐ上に挙げていた。
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