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1 秘密の花園
始業式の朝。神林八千恵は、凛花学園の花園で、おそらくこの世でもっとも美しい光であろう光景を目の当たりにした。
色味の濃いジャンパースカートに同色のセーラーボレロという重厚感のある凛花学園の制服を違和感なく着こなした乙女が、朝露きらめく草花たちのあいだを優雅に歩いていた。
その姿は、この花園という異国情緒あふれる舞台に限定すれば、物語の主人公。
人気のない校舎裏の花園に独創的なストーリーを描く千紫万紅は、あの黒髪の美少女のためにある。美しい花も、珍しい花も、全ては主人公を引き立てるための背景に過ぎないのではないか。
これまでの人生において、主人公と呼ばれる人たちとは縁遠い世界で生きて来た八千恵は、満開に咲く花たちに囲まれながらも一際美しく輝く彼女を、心底うらやましく思うのであった。
(美少女っていうより、絶世の美女……)
その際だった美貌は、同性の八千恵も思わず見とれてしまうほどであった。
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