プロローグ

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 凛花学園高等部の旧校舎には、ある有名な怪談話がある。    その名も、『旧校舎のC子さん』。    なぜAでもなくBでもなくC子なのか。モデルとなった人物の頭文字がCなのか、それとも他にA子さんB子さんといった幽霊がいるのか。  その理由は定かではないが、このC子さんという幽霊に関する怪談話は、何十年も前から凛花学園の生徒たちのあいだで語り継がれている。  もともと、凛花学園の高等部は、心霊スポットとしても有名なとある山と隣接しており、その山にもっとも近いのところというの旧校舎なのだ。そのせいで霊が集まりやすいとか、魂の通り道だとかいう噂も多くあり、現在その旧校舎に近づく者は誰もいない。  生徒も、教員も近づかないその閉ざされた空間。  科学の発達した今日、そのようなオカルトめいた話を信じる者は少なくなったが、凛花学園の生徒は先輩や教師たちの教えを守り、遊び半分で旧校舎へ近づくことはしない。  何十年も取り壊されずにいる無人の旧校舎。その情報は学校案内のパンフレットにもウェブサイトにも一切載っておらず、真実を知る方法はその目で直接確かめるほかにはない。 「二階の窓から髪の長い女性がこちらを見ている」 「花園門に近づくと、旧校舎の中へ引っ張り込まれる」 「夜になると旧校舎に明かりがともる」  身の毛もよだつような話ばかりだが、不思議なことに旧校舎での事件、事故はこれまで一例も報告されておらず、凛花学園の生徒たちは今日も平和に日々を過ごしている。  それもそのはず。  旧校舎にある花園門には、頑丈な鎖と南京錠が幾重にも張り巡らされ、生徒の立ち入りは一切禁じられているのだから。  花園門の『向こう側』にいけるのは死者のみである。  という話は、一部の生徒しか知らない凛花学園のタブーである。
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