4章……甘やかな枷

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side 奏 茅乃がオレ呼ぶから…笑ったんだ 手を伸ばしたら茅乃の頬に手が触れた 形の良い唇にキスをして味わえば… 茅乃の唇が開いて赤い舌が欲望を誘う 「…すき…奏…」 甘い、身体を痺れさせる吐息混じりの茅乃の声は自分の身体の中心を意図も簡単に持ち上げる 「奏…」 自然に溢れた声…揺すられる感覚 (愛してる…) 「…奏、奏…」 急激に視界が開いて…母の姿が目に飛び込んできた …つんとする薬のような臭いに一瞬顔が歪む 「か…あさん?」 起き上がろうとして身体が動かないことに驚き、次いで痛みが襲ってきた (痛…い) 「痛い?…諸々覚えてる?」 「あ…うん…なんだっけ…あー、そっか」 段々と記憶が巻き戻されて分かった 「まったく…心配かけて…ビックリしたわよ…」 「ごめん」 普段は快活な母の心配そうな顔に本当に申し訳なく感じた 「でも良かった…しかし…だあれ?『カヤノ』さんって…」 「は?」 母はニヤリと笑う 「あんた…何度も、カヤノって呼んでたわよ?大切な人?」 「ああ…うん…まぁ…」 隠しても…バレてるなら仕方ないと頷くと母が変なことを言いながらベッドの横の棚にタオルを置いた 「綺麗な方だものねー…賢そうな感じだし…」 「は?」 (なぜ?知ってんの) 「昨日いらしたのよ條島茅乃さん…でしょ?すぐ分かったわよ?」 「…え…」 「社長さんといらして、あんたのことすごく優しい目で見てたから…あんたの呟きの人は彼女だって…すぐ分かったわよ」 母は嬉しそうに微笑む 「…そっか…来たんだ…」 「目が覚めたらまた来てくださいねとは伝えたわよ?」 「うん…」 (茅乃、大丈夫かな…) オレを必死で止血して…血だらけになっていた筈だ…会社の前だったのに必死でオレの名を呼んでいた でもたぶん… 『さようなら、奏』 二度来ないだろう 「歳上みたいだし、あんただらしないからちょうどいいじゃない…大事にしなさいよ?」 「あー、いや…その…」 「離婚成立してないの?」 「え?」 「指輪のあとが…あったから …たぶん既婚だったんじゃないかなとね…」 母の観察眼に驚いた 「本気なんでしょ?あんなに苦しい中で名前を呼び続ける位なんだから…」 「うん…オレにはあの人しか居ない」 「それなら私からは何も言えないわよ」 母が優しく微笑んだ
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