1章……見ないで

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(あぁ…バイブレーションにしてあったんだ…) 着信らしく、震えは止まらない 私は岳人を押し退けて頭を下げるとロックを解除して電話に出る 「もしもし、條島です…」 「茅乃さん…忘れ物しましたよ?」 聞こえてきたのは高塔くんの声 「え?」 「…預かってますから、明日渡しますね?」 「うん…有り難う、お疲れ様」 ツーツー 通話が終わると私は部屋着をきちんと直した 「誰から?」 「うん、チームの後輩…さっき私が忘れ物したみたい」 何となく、高塔くんだと言えなかった 「へえ……律儀だな?会社ですぐ会うだろうに」 「そうね……」 流れていた空気を電話が壊してくれたから 岳人にこういった 「ごめん、やっぱりあんまり調子がよくなくて……寝るね?」 私から断ったことは……実は数えるほどしかないだから岳人は何か感じるかもしれない 「あ、うん……こっちこそ…ごめん」 岳人は私を見詰めて何か言いたそうにする 「有り難う岳人、大好きよ…おやすみなさい」 だから、その視線を避けるようにハグをして…誤魔化した 「うん…オレも大好きだよ茅乃」 白々しい会話をして私は寝室に逃げ込む とはいえ、同じベッドに入るのだけれど… でも、その日 一晩中…岳人は私の横には来なかった
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