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(あぁ…バイブレーションにしてあったんだ…)
着信らしく、震えは止まらない
私は岳人を押し退けて頭を下げるとロックを解除して電話に出る
「もしもし、條島です…」
「茅乃さん…忘れ物しましたよ?」
聞こえてきたのは高塔くんの声
「え?」
「…預かってますから、明日渡しますね?」
「うん…有り難う、お疲れ様」
ツーツー
通話が終わると私は部屋着をきちんと直した
「誰から?」
「うん、チームの後輩…さっき私が忘れ物したみたい」
何となく、高塔くんだと言えなかった
「へえ……律儀だな?会社ですぐ会うだろうに」
「そうね……」
流れていた空気を電話が壊してくれたから
岳人にこういった
「ごめん、やっぱりあんまり調子がよくなくて……寝るね?」
私から断ったことは……実は数えるほどしかないだから岳人は何か感じるかもしれない
「あ、うん……こっちこそ…ごめん」
岳人は私を見詰めて何か言いたそうにする
「有り難う岳人、大好きよ…おやすみなさい」
だから、その視線を避けるようにハグをして…誤魔化した
「うん…オレも大好きだよ茅乃」
白々しい会話をして私は寝室に逃げ込む
とはいえ、同じベッドに入るのだけれど…
でも、その日
一晩中…岳人は私の横には来なかった
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