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「珍しいよな、茅乃が昼飯を誘いに来るなんて」
「うん……」
二人で以前はよくランチに来ていて、今日もその定食屋さんに来た。
ここならあまり女子社員が来ないのでそこまで人目も気にならず二人でいられたからだ。
いつからだろう来なくなったのは
「なんで夜隣に来なかったのかなって気になって」
複雑な気持ちだったけれど、隣に来ないのも違う気がした
「あぁ、あのままじゃ茅乃に酷くしてしまいそうだったから、さ」
岳人は少し寂しそうな顔で呟く
「え……」
(私が断ったからと言うこと?)
「私のせい?」
思わず口調が責めるようになってしまう。
「違うよ、オレの勝手だよごめんな?」
「ううん……わかった」
いつも通りの優しい岳人は、テーブルの上で私の指に指を絡めて甘い視線でこちらを見る
「茅乃が好きだから、大事にしたいんだ」
昨日のあの場面に出くわさなかったなら、この言葉を聞いただけできっと嬉しくて笑えた筈だけれど……
(だったらなぜ?美咲ちゃんと?)
今は不信感にしか繋がらなかった
それでも嘘をつかなければ
「有り難う気遣ってくれて」
「体調はどう?顔色が良くないな」
岳人が急に耳朶に触れるから、ビクンと身体が動く…朝、高塔くんに噛まれたそこはまだ熱を持っているようだったから…
「耳、赤いな…」
「朝給湯室でぶつけたからかな…」
「大丈夫か?」
心配そうな顔をする岳人。この人が私を裏切った?分からない……
岳人の見た目は華やかで色男すぎて
はじめは苦手だったのに、接していくうちにストレートで誠実なところを好きになった。
いつでも真っ直ぐに私を見てくれて、満たされてた
考えていたら泣きたくなって改めて岳人を見詰める。
(まだ、こんなに好きなのに……)
「そんな顔で見るなよ」
「え?」
そのまま厚い唇を耳に当てられ岳人は囁いた
「ここで押し倒したくなる」
「ばか……」
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