1章……見ないで

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「條島課長ってホントにカッコイイですね……これ、どうぞ」 デスクでデータを打ち込んでいると隣の椅子に高塔くんがするりと座り、私に缶コーヒーをくれた 「有り難う……そうね…」 「茅乃さんを射止めただけある…」 「地味な私は嫉妬で大変だったわよ?」 「へぇ……あっと…」 高塔くんが手に抱えていたファイルに挟んである書類を私の足許に何枚かバラバラと落とした次の瞬間 「…!」 スルッと何かが足首に触れる 人から見えないデスクの下で、高塔くんが屈んで書類を拾いながら私の足首を撫でたのだ ツーっと膝まで撫で上げてこちらをチラリと見上げて…離れた その触り方に視線の艶かしさに思わず反応してしまうから…必死にそれを押し殺す 「すみませんでした、『脚は』平気でしたか?」 それなのに高塔くんは涼しい顔でしかも心配そうな顔で目の前で小首をかしげている (し、白々しい…) 「ええ、大丈夫よ?」 だから精一杯何でもないフリをした… (なんで、こんなに接近して来たの…?しかも…) 高塔くんの目が囁く 『好きです』 榛色の瞳で欲望を混ぜた視線を絡ませるから 仕事中だと言うのにその視線に酔いそうになる (いつから私を好きだなんてからかうようになったの?……こんな子だった?) 仕事は出来るけれど、地味な男の子だと思っていた それなのに……昨夜からの高塔くんはまるで別人のように妖艶だ 「…後で午前中に渡したA社への見積り頼むわね?」 「…畏まりました」 頭を下げて下がる時にはいつものように地味な彼だった そのまま仕事をして……何となくもて余しぎみな身体を抱えて私は帰宅した ご飯……何にしようかな…… 冷蔵庫の前で悩んでいるとスマートフォンがメッセージの通知を受けて鳴る 『今日は夕飯いらない。ごめん部下に奢ることになった』 「わかった、気を付けて帰ってね」 ……作らなくてよくなったか…… ペタンと床に座り冷蔵庫に頭をつける 普段は意識しないモーターの音が耳に痛い 一人で部屋にいるのも虚しくなって化粧を直して外へ出た (あそこへ行くか……) 足は以前よく行っていたバーに向かう
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