1章……見ないで

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結婚して4年 20代は仕事仕事と過ごして…働き出して8年目気づけば30歳になっていた そんな時にいきなりプロポーズしてきたのは会社の上司の條島岳人(じょうじま たけと)だった 長身で細身ではあるけれど昔は大学まで野球をしていたとかで肩幅があり、どちらかといえば筋肉質な体型 大きな猫目、意志の強そうな真っ直ぐな眉と大きめの唇、高い鼻 全てのパーツが整っていて濃い目だがバランスが良くイケメン そして、少し強引だがやり手で部下にも人望が厚いとても頼りがいのある課長としても名高い彼に …急に交際と結婚を同時に申し込まれて激しく動揺したのを覚えている 地味で、あまり目立たぬようにしていたし、真面目な所しか取り柄がない私を岳人はとても熱心に口説いた 「結婚するなら君だと、部下にした当初からずっと考えていた…」 岳人の部下になって1年…まさかそんなことを言われるなんて思わず、しかも中々その言葉を信じられなかった… けれど毎日のように送り迎えをされたり 何度も何度も告白されるうちに…絆されて結婚するに至った そこからは毎日のように抱かれて 「君と結婚出来て幸せだ…」 甘い台詞を囁かれる結婚生活だった 結婚してからも仕事は続けていたけれど 岳人との子どもも欲しいな、なんて考えていたのに 中々授からない (こんなに愛されているのに…) そう不満をぽろりと漏らすと 岳人は優しく微笑んで頭を撫でる 「君が居ればオレは充分幸せだよ」 少し鼻にかかるけれど響いて甘い声に 私は岳人と居たいだけだと そう暗示をかけるように何となく自分を誤魔化しながら過ごしていた (こんなに幸せでいいの かしら…) そんな風に本気で思っていたあの日までは…
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