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社長に促されて小さくノックしてから病室に入るとご家族…お母様らしき方が居た
カーテンに囲まれて奏の姿が見えない
「はい…?」
不思議そうな顔をした女性に頭を下げる
「高塔くんの同僚の條島茅乃と申します…お加減はいかがですか?」
「有り難うございます母です…條島さん…息子がいつもお世話になっておりますとても綺麗な方だから彼女さんだったらいいのになんて思っちゃったわ…奥へどうぞ…まだ眠ってますけど…」
ころころと可愛らしく笑う女性だ
笑うと奏そっくり…
「とんでもありません…私なんて…では失礼します」
カーテンの中に入り膝まづくと…すぐ傍に美しい鼻梁…苦しくはないのか青白い顔ではあるが穏やかそうだ
「奏…」
小さく呼んでそっと腕に触れればピクリと反応して…口許が少し緩んだようにみえた
(良かった…これでさようなら出来る…)
頬に少しだけ指を這わせてからカーテンの外へ出た
「あら、もういいの?」
「いいのか?」
カーテンを出ると社長がお母様と話していた
「はい…穏やかな顔で安心しました…」
「ふふ、目覚めたらまた会いに来てやって?貴女が来たら奏喜ぶでしょうから」
お母様は微笑むが…二度と来られない私は曖昧に笑って頭を下げた
「失礼します…」
社長が複雑そうな顔をしていた
廊下に出ると緩んだ心が涙を落とした
(助かって良かった…良かった…)
…さようなら、奏…
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