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……
手に入らないなら
壊してしまえばいい
「高塔くんはやっぱり私には振り向いてくれなかった……岳人さん…貴方は私を救ってくれるんでしょう?」
涙目で訴えるミキに優しく問いかける
「ミキ…欲しいのはオレだったか?」
「…違う…高塔くんが欲しい…」
呟くミキに微笑むと耳打ちする…
「欲しければ…高塔を…壊してしまえばいい」
そして……彼女のポケットにナイフを忍ばせた
あとは
どうなるか…オレは知らない
「私が傍にいます」
美咲がそうやってオレを家に住まわせた
元の家は茅乃との思い出があり過ぎて…帰れなかった…きっともう彼女の荷物はないだろうが…戻れなかった
「岳人さん…抱いて?」
美咲が首に手を回せば…機械的に手は動く
愛情なんてなくても
この人形を抱く事は簡単だ
茅乃を失い、仕事を失い……
あとは死んだように生きるだけのオレは
人形だと思っていた美咲に生かされるのだ
(茅乃……)
愛を捨てれば楽になれるのだろうか
いつか、美咲を愛せるのだろうか
「ん…っあ……っ」
目の前で嬌声をあげる美咲の声ではなくて
『岳人…』
頭に響き、聞こえるのは茅乃の声ばかりだと言うのに……
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