962人が本棚に入れています
本棚に追加
そのまま一緒にタクシーに乗り込んだ
アルコールの力か話をしたからか…少しだけ気分が落ち着いた
車内でしきりに高塔くんが心配した
「大丈夫ですか?…無理に帰らなくても…」
「平気…向き合わないと…ね」
窓の外を見ながら自分に言い聞かせるように呟けば沈黙が降りてくる
…高塔くんが何か言いたそうに私をじっと見ているのには気付いていたけれど、それは敢えて目を向けないでいた
そうでないと
不安で胸に飛び込んでしまいそうだったから
(一時の気の迷いで彼を巻き込んではいけない)
暫く走ると車は岳人と二人で住むマンションの近くに来て…少し離れた路地で降ろしてもらう
「ご馳走さま、高塔くん…また明日」
「お疲れ様です茅乃さん…また明日…」
タクシーから高塔くんが顔を出して挨拶をした
離れるときに私の指に自分の指を一瞬絡める
「…オレ、諦めませんから」
そんな風に囁く言葉も聞こえたけれど
私はそれには答えず背を向け歩き出す
(さぁ…気持ちを切り替えて帰ろう)
電源を落としていたスマートフォンを起動してエレベーターで昇っていく
その動きに反比例するように気持ちがどんどん沈んでいく
時間は0時を回っていても
(着信はなし…か…)
鍵を開けて静かに玄関に入れば
廊下に間接照明の光が入る
そこを抜けて行くと明るいリビングに入るいつも以上にその光が眩しかった…
リビングのソファーでは
部屋着になっている岳人が本を読んでいた
最初のコメントを投稿しよう!