雪国会議

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 再び会議場がざわめきの波にのまれようとした時、 「たいへん興味深いお話です」緑の雪が降る国から来た大使が挙手しました。「あたくしどもの雪景色は苔むした森にしか見えないもんで、都会の人にはやさしいが田舎の者には退屈な景色でしかないんですがぁのう。だもんですからとりわけ雪のシーズンを愛でるという習慣はないんですがぁ、しかしいまオタクさまの国の話で興味深かったのはその、“与える立場になれば赤い雪が素晴らしい”という料簡ですなぁ。こりゃいったいぜんたいどういうわけなんでしょう」  赤い雪の降る国の大使は胸を張ります。「それはあなた、簡単なことですよ。クリスマスにおいて与える立場の象徴といえばどなたを思い浮かべますかな?」 「そりゃあまあ――」緑の雪が降る国の大使は小首をかしげてこたえます。「サンタクロース……、ですか?」 「そのとおり! みなさんご承知のとおり、サンタクロース大明神です!」 「だ、大明神!?」 「左様! サンタクロース大明神さま!」  腕組みをしたある国の大使が苦笑いを浮かべてつぶやきます。「サンタクロースに大明神をつけるのはいかがなもんですかねえ」 「そこのあなた、発言するなら挙手をしていただきたいもんですな!」赤い雪の降る国の大使はとがった声を出しました。  黒い雪が降る国から来た大使は腕組みをとくと、おずおずと手をあげました。「いえいえ、発言ってほどのことでもないんです。ちょっとしたカルチャーギャップに戸惑ったもんですから。さ、さ、ぜひ続きをうかがいたい。大明神さまがこの一件にどう関係があるのか」  赤い雪の降る国の大使は小鼻をひくつかせて黒い雪が降る国の大使を一瞥すると、水をひと口飲みくだして呼吸を整えました。
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