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“藍”感 -aikan-
「グウェナエル」
重厚な声音がゆっくりと響く。
「はい、父上」
「お前ももう成人だ。そろそろ身を固めたらどうだ」
「……」
グウェナエルと呼ばれた青年は父親の言葉に応えることなく、手元の皿に視線を落とす。
「相手はいないのか?お前には近寄って来る淑女も多いだろう」
「……これと言っては」
大きなテーブルの中央に向かい合って座る。彼ら二人以外には、壁際に待機する給仕のみ。
「お前は第二王子だ。兄と違って幾分か自由が効くとはいえ、きちんと人生を歩んでもらわねばならない」
「分かっているつもりです」
「ならよかった。ではまずは見合いをしてもらおう」
グウェナエルは手を止めた。そこで初めて父の顔を見た。彼の目に映る威厳と気品に溢れた姿は、まさに王の出で立ちであった。月を落としたような荘厳で落ち着いたそのグレーの瞳は、有無を言わせぬ凄みがあった。
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