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雪の日の配達のあとは、決まって母が黒電話の上に座布団を何枚も重ねていたものだ。
「電話鳴ってない?」
「いいんだよ」
全部が全部、今朝の新聞が届かないという苦情の電話、いちいち聞いてるとキリがなさそうだ。気持ちはいつもの時間に届けたいとみんな思っている。でも雪の日の新聞配達は本当に大変なんだよ。
プルルルル…プルルルル…
電話は今や、白いFAX付きのプッシュボタン。もう呼び出し音に悩むことのない母が受ける。
「アンタにだよ。実怜さんからだけど、ケンカでもしたのかい?」
「いや」
ケンカなんて。ただ、家に戻った実怜は、俺と柊斗がいなくてさぞ心配してるだろうと受話器を受け取った。
「ああ、実怜。今柊斗連れて実家に来てて…?実怜?どうした」
実怜は泣いていた。
電話は言葉を継げない実怜に代わり、義理の母が出た。
「あんまりじゃないの!育児は実怜任せ、仕事もせずに朝から晩まで何してるのって、紙を切ってるだけっていうじゃない?!どうしてこの娘ばかりに苦労させて!」
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