183人が本棚に入れています
本棚に追加
/64ページ
「ありがとう。私はあなたのお陰で今日も生きてます」
朝、目が覚めると、私は自分の心臓に手を当てて感謝する。
あの日から私の日課になっている。
「奈々、おめでとう」
「本当におめでとう」
「ありがとう、お母さん、お父さん」
リビングに行くと、私の入学式の晴れやかなスーツ姿を見て涙ぐむ父と母。
両親がこんなにも喜んでいるのには理由がある。
私は小さい頃に心臓に欠陥が見つかってから、人生の殆どを病院で過ごしてきた。
成人まで生きられないと宣告されて。
私は機械に繋がれて生きていた。
ずっと毎日怯えながら生きていた。
眠る時、明日もちゃんと目が覚めてくれるのかと怯えて生きてきた。
両親が生きて欲しいと望んでいたから人工の心臓をつけて何とか生きていた。
ある日、そんな日々に突然終止符が打たれた。
私に合う心臓のドナーが現れたのだ。
手術が成功するかはわからない。
死ぬかもしれない。
最初のコメントを投稿しよう!