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終話 蛍
りん、と澄んだ鈴の音が聞こえた。
蛍は、自分の膝の上に転がっている鈴を、ぼんやりと霞む目で見下ろした。小さな鈴は、闇殿を包む炎に映えて、金色に輝いている。
この美しい色を知っている、と蛍は思う。忘れるはずもない。閉じた瞼のなかで、いつまでも褪せることのなかった色だ。
思えば、蛍が目にする景色は、いつも炎の燃え盛るこの世の終わりのような光景ばかりだ。
幼い頃、もう二度と開けまいと誓って目を閉じたときも、最後に瞼に残ったのは赤い炎だった。
それと、金色の綺麗な狐。
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