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どうしても獣としか思えない雰囲気が、目の前の人物からにじんでくるのだ。
自分のそばにいるのは、本当に人なのだろうか……。
「あの……、大丈夫ですか?」
奇異なものを避けようとする衝動をこらえ、蛍は思いきって話しかけた。
声がおびえたように震えてしまう。
ちりん、とまた鈴の音がする。
さきほどよりかすれて響いたその音は、目の前にいる人物の戸惑いをあらわしているように聞こえた。
蛍は、閉じたままの眼差しをあげる。
「うずくまっていらっしゃったので、お加減が悪いのかと」
今度は震えずに言うことができた。
少し間をおいて、目の前の人物がこたえる。
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