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「愛君を好きになってはダメよ」 その日の夜、母にこっそりと呼ばれて言われた言葉。 「どうして?」 「貴方達が兄妹だからよ!」 お母さんは私とメグが兄妹だからと激怒した。 子供の私にはワケがわからない。 だってメグとは血は繋がっていないのに。 「どうしてダメなの?」 「また貧乏な暮らしに戻りたいの!?」 その時はその言葉の意味がよく分からなかった。 とりあえず母の前でメグの話をしちゃいけないことだけは分かった。 そして大きくなるにつれ、言葉の意味が分かった。 母は義父の病院で働いていた看護師で、不倫の末に結婚したらしい。 いつも私と母を穢らわしそうな目付きで見ていた義祖母が丁寧に教えてくれた。 そのせいか母の立場は神林家では末端。 義父と一緒に住むまでは私と母は小さなアパートに住んでいた。 私は保育園で一日の大半を過ごしていたのは覚えている。 今はその暮らしが嘘かのような、高いコンクリートに囲まれ、大きな庭までついた大きな二階建ての家と贅沢な暮らし。 あの暮らしに戻りたくないし、自分を守りたいのだろう。 だから母は私の恋に反対しているのね。
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