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だからって、部屋中真っ赤に染めるような薔薇を用意してくれるなんて。一体何本あるんだろう。100本……ううん、そのくらいじゃ足りない。玄関もリビングも……わぁ、キッチンまで。この分じゃ、家中薔薇だらけだ。
それだけじゃなくて、部屋ごとのインテリアも凝っている。キャンドルとゴールドのハートを中心にしたロマンティックなエントランスとリビング。ピンクを混ぜて、可愛らしく仕上げたキッチン。……他の部屋は、楽しみに取っておこう。
夕食は、彼の実家からシェフが来てくれたらしく、フレンチのフルコース。温めるだけで、おいしく食べられるように調整されている。
……あぁ。分かってはいたけど、私の準備しようと思っていたことなんて、彼のしてくれたことに比べたら、貧相なことだった。プレゼントだって、何でも持っている彼に下手なものを選べず、結局フォンダンショコラしか用意していない。
「どうしたの?」
落ち込んだ私を、彼が心配そうに見ている。
彼のいる世界と、私がいた世界は全然違うってこと。理解していたはずのことで、いちいち落ち込んでちゃダメだ。どんなに世界が違っても、彼と一緒にいるって決めたんだから……!
「あの……ね、私もプレゼントを用意してきたの。あなたの実家にいるパティシエールの相坂さんに教わったから大丈夫だと思う」
「え?」
「フォンダンショコラを作ってきたの。後で、食べてくれる……?」
「君が……? 僕のために……?」
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