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久しぶりに袖を通したセーラー服は防虫剤の臭いがした。
玄関を出ると、4月にしてはいくぶんひんやりとしていた。
休み中はジーパンばかり履いていたので、紺のスカートに遠慮無く入ってくる風に、キミドリは思わず開いていた足を閉じた。
キミドリが住んでいるのは、街外れの川沿いにある団地だった。
物心ついた頃から住んでいるその団地は、築30年以上経っていて、外壁は煤けてひび割れ、コンクリートの階段はいつもじめっとしていて苔やカビの温床になっていた。
ベランダの柵の塗装は所々剥げ、そこから発生した赤錆が点在しているのが、遠目から見ると茶色い模様のようになっていた。
そんな住宅の廃れ具合を隠すかのように、ベランダに色とりどりの鉢植えなど置いてみたり、夏になればヘチマや朝顔のツタをカーテンのように這わしていたり、質のよさそうな布団をこれ見よがしに干している部屋などを見ると、そのいじらしさにキミドリはいつも脇の下をくすぐられたような気分になった。
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