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自分の所のベランダはというと、申し訳程度に洗濯物がひらひらと揺れるだけでなんの面白みも無く、その寄る辺ないベランダの様子がそのまま家の中まで映し出しているようで、キミドリは目を背けずにいられなかった。 川は団地の東側にあって、キミドリはいつも自転車でその川沿いの土手を走り学校へ向かう。 今の時期は桜が満開で、その中を自転車で走る自分を想像するだけで、憂鬱だった気持が少しだけ晴れていくような気がした。 自転車置き場に着き、リュックから自転車の鍵を出し差し込んでいると、近くでエンジン音が聞こえた。 つられて音の方に首を伸ばすと、スクーターが走り去っていく後ろ姿があった。 ヘルメットをしているので顔は見えなかったが、着ている紺色の学ランでそれが自分と同じ高校の男子生徒だということに気付いた。 自分の住む団地に同じ高校の生徒がいることは知らなかったし、キミドリの高校はバイク通学を禁じているはずだった。 キミドリは首をひねりながら、駐車場に停まる車の間を抜け小さくなっていくその後ろ姿をしばらく見つめた。 もしかして新入生? だとしたら2個下か。入学したばかりで校則違反なんて、だいぶ無茶をするものだな。 そこまで考えて、キミドリはある人物を思い出した。 緑さんは、同じ団地に住む真希さんという年の近いシングルマザーと親しくしている時期があった。     
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