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キミドリはカエデになら何でも包み隠さず話すことができたし、カエデもきっと自分に対して同じように感じていると思っていた。
カエデにこの手を見せたら、きっとつぶらな瞳をまん丸くして驚くだろう。
そのあと、もしかしたらお得意の顔のパーツを中央に寄せる変な表情をして笑わせてくれるかもしれない。いや、真剣になって病院に行くことを勧めてくれるのではないか。
手を見たあとのカエデの反応を想像すると、キミドリの表情は自然と緩んだ。
校門をくぐり自転車置き場に自転車を停め昇降口に向かう途中、肩を叩かれた。
「キミ、おはよう」
振り向くと、カエデが照れたような笑顔で立っていた。
仲の良い友達はみんな、キミドリのことをキミと呼ぶ。出会った頃、キミドリがそう呼ぶように申し出たのだった。
カエデとは春休みも何回か会っていたのだが、お互い制服姿で会うのは久しぶりなので、どことなくよそよそしい表情になってしまうのがキミドリはおかしかった。
カエデの真っ直ぐに眉上で切りそろえられた前髪は、今日もスプレーでガチガチに固めてあるのか、風が吹いても少しも動かない。
それとは対照的に、ストレートアイロンを毎朝当てているという細い黒髪は、カエデの華奢な肩を覆うようにサラサラと揺れていた。
「やだねぇ、クラス替え」
キミドリが言うと、カエデは眉間に皺を寄せ首肯した。
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