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キミドリはぶっきらぼう答えながら靴下を脱ぐと、濡れた床を布巾で拭き、その布巾をシンクに投げた。
柔らかい布巾は汚れた排水溝の横にあるマグカップにしなだれかかった。
今朝、キミドリがコーンスープを入れて飲んだ、黄色いマグカップだ。その横には、茶色い油が浮いた白い皿が積まれている。
キミドリはシンクに溜まった洗い物を横目で見ながら、風呂に入る為に脱衣所に向かった
服を全て脱ぎ終えた途端、自分の髪の毛がにおうのに気付く。
キミドリは、駅の近くのイタリアンレストランでアルバイトをしていた。
体に染みこむニンニクの臭いは、バイト中は全く気付かないから不思議だ。
平日は授業が終わったあとほぼ毎日、休日もなるべくシフトに入れてもらうようにしている。
高校に入ってすぐに始めたから、もう3年目になる。
家族経営のアットホームなお店で、シェフや奥さんもキミドリの仕事ぶりをだいぶ買ってくれていて、可愛がってもらっていた。
美味しいまかないも出るし、たまにお土産という名の余り物ももらえる。
キミドリにとって、まさにオアシスのような店だった。
裸になったキミドリの上半身が、洗面台の鏡に映る。
この歳になっても、胸は申し訳程度の膨らみしかなく、この膨らみ方が完成形なのか、それともこの先もっと膨らむのか、キミドリには分からなかった。
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