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『キミドリ』という自分の名前が特殊なものだと気付いたのは幼稚園の年長の頃だった。
「なんでお母さんは、わたしに『キミドリ』って名前を付けたの?」
キミドリに純粋な疑問をぶつけられた緑さんは、ニッコリ微笑んでこう答えた。
「だって、お母さんが緑だから。もし、もう一人子供がいたら、フカミドリって付ける予定だったんだよ」
当時のキミドリはそれを聞いて、「そうか、お母さんが緑だからか」と納得したような気がしていたが、成長するにつれそれは納得とか理解とかの範疇を超えた回答ではないかという思いが湧いてきた。
キミドリがお腹にいる頃、緑さんは離婚しているので、父親は名付けに関与していないと思われた。
緑から産まれたからキミドリとは、なんとも安易すぎないだろうか。
お母さんはただ面倒臭くて、キミドリなんて変な名前をわたしに付けたのではないか。
キミドリは次第にそんな疑念を抱くようになった。
小学校に上がって学年が上がるにつれ、その疑念は確信に変わっていく。
緑さんは、キミドリの学校行事を、仕事があるという理由でほとんど参加しなかった。
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