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“踊り場で上を見てはいけない。そこにあれはいるから――”
「―――ッ!!」
そんなはずはない。そんな訳がない。ああ、でも振り返らないように、上を見ないように早く下りてしまおう。
早く。まず一段、足を前に出して踏み込む。
早く。タタタタン、と音をたてて踊り場まで駆け下りる。
足元を見て、上を見ないで。
もう半分だけだ。
踊り場から、1階を見て、
そして―――暗闇に輝く瞳を見た。
「………ひっ―――ぁッ!?」
誰?何?
一瞬呼吸が止まって、足がふらつく。
逃げた方がいい!?逃げろッ!!逃げなきゃ…!!
逃げよう、としても両の足はおろか、手の指一本すら震えて動かせない。ぐらり、と体が傾いて尻餅をつこうと―――。
「きゃぁあっ!!!」
悲鳴があがった。
それは無論、声すら出せない自分のものではなく―――。
「ぁ………ひっ!」
1階でソイツがどすんと音をたてた。……尻餅をついたんだ。
「……あ、えっと………もしかして――」
「や、やだ……ッ」
尻餅をついたソイツ―――彼女は僕の背後からさす月光を浴びてその姿を露わにした。
やっぱり、生徒だ。
多分。
けれど、制服が違う。
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