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文武両道を謳い文句にしている星海学園は、勉強だけではなく、体育の授業も厳しかった。翔太はあまり運動が得意な方ではない。その上、今日の体育は、翔太が特に苦手としているハンドボール投げの授業だった。
「翔太!ちょっとこれは酷すぎるぞ!9メートルはないだろ!」
呆れた顔でそう言ったのは、一年三組の担任、北村康弘先生だ。26歳独身で、背が高く、教育番組の体操のお兄さんのような、爽やかな美形であるため、生徒達から人気があった。体育の他に、数学も担当している。
先生が酷いと言ったのは、翔太のハンドボール投げの成績である。それは、クラスの平均を大きく下回っていた。
「ほら!こうやって投げるんだ!」
北村先生がお手本を見せる。ボールは矢のような弾道を描いて、グラウンドの遥か遠くに落ちた。優に40メートルは超えていると思われる。教え子達から歓声が上がった。
「やってみろ!翔太!」
「は、はい!」
翔太は先生の真似をして、力一杯ボールを投げた。
「9メートル!」
測定係の子が叫ぶ。
「やっぱりダメか…」
北村先生はがっくりと肩を落とす。
「そのフォームが良くないんだ。ほら、足はこれくらい開いて、腕はこうで、こうやって手首のスナップをきかせて投げるんだ」
先生が、翔太の身体をあちこち動かし、フォームを修正する。
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