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と、その拍子に、手からボールが離れ、本来のコースとは大きく外れ、勢い良く飛んで行った。
「おっ!今の結構飛んだんじゃ…」
直矢は言いかけたが、ガシャーンッ!という何かが割れる音によって、言葉が遮られた。
「あ…」
「なんかマズいかも…」
翔太と直矢が顔を見合わせると、次の瞬間、
「 コラーッ!」
と、怒声が飛んでくる。お約束の展開だ。
「ど、どうしよう…」
翔太が戸惑っていると、
「とにかく、行って見よう」
と直矢は翔太の腕を掴む。
二人は恐る恐る、ボールの飛んで行った方へ近づいた。グラウンドと隣接する校庭の外れの方に、ボールは落ちたようだった。
「翔太、隠れろっ!」
「わっ?!」
突然、翔太は直矢によって、茂みの中へと引きずり込まれる。
「どうしたの?」
茂みの中で、翔太が尋ねると、直矢は唇に人差し指を当てて、「しーっ!」 と言った。そして、茂みから外を見るようにと、翔太に目で合図する。
二人は茂みの中から、そっと外を覗いた。
するとそこには、園芸部が管理している植木鉢や盆栽等が、ずらりと並べられている棚があり、その棚の前で、一人の大柄で筋骨の逞しい上級生が、仁王立ちしているのが見えた。その額には青筋が浮かび、目は釣り上がり、顔は真っ赤で、頭から湯気が出ている。
怒っている。ものすごく怒っている。
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