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そして、彼の足元には、壊れてぐちゃぐちゃになった盆栽と、あの嫌がらせとしか思えない程絶妙に握り辛い大きさの、ハンドボール用のボールが落ちていた。
翔太と直矢は、その光景を見て何が起こったのか、だいたい理解した。
「まずいよ、翔太!あの人、田中雄大先輩だよ!」
「田中雄大先輩?!あの人が?!」
翔太と直矢は小声で会話する。
五年二組の田中雄大先輩のことは、翔太も名前だけは知っていた。なぜなら彼は柔道部で、去年の全道大会の優勝者だということで、有名なのだ。また、田中先輩は、盆栽を育てるという意外な趣味を持っていて、園芸部も兼部しているということも、園芸部員の智から聞いて知っていた。
「おい!誰だ!ボール投げたやつ!出てこい!」
こうしている間にも、田中先輩は怒号を放つ。柔道で鍛え抜かれた、強靭な肉体を持つ彼が怒ると、とても迫力がある。
「ど、どうしよう…」
翔太は怯え、震え上がる。
「ここは素直に謝るしかないな。大丈夫、二人一緒だから」
直矢は翔太の肩にポンと手を置いた。
「うん」
そう言われると、少し心強くなり、翔太は意を決した。
翔太と直矢が茂みから姿を現わすと、田中先輩は二人をギロリと見据えた。
「お前らか!」
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