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「あーあ、すっかり遅くなっちゃった」
翔太が疲れた声で言う。
それもそのはずだ。一日で色々な事があり過ぎた。今日はもう、ゆっくり風呂に入って…
そう思って直矢は気付いた。
「あーっ!入浴時間過ぎちゃってる!」
混雑を防ぐため、学年ごとに入浴する時間帯が決められているのだ。決められた時間内に入れなかった者は、他の学年に混ざって入るか、シャワーだけで済ませるかのどちらかになる。
「どうする?シャワーにする?」
翔太にきかれ、
「そうするか」
と直矢は答えた。上級生に混ざって風呂場に入るのは、勇気が必要だった。
風呂場の脱衣所のすぐ横に、シャワー室はあった。二人が中を覗くと、ずらりと狭い個室が並んでいて、壁には、「コインシャワー1回100円」と書かれているのを見つけた。
「げっ!金取んのかよ」
直矢が不満の声を漏らした。
「100円も?!高いよー」
翔太も不満そうに文句を言った。中学生にとって、100円は結構大きいのだ。星海学園は、私立ではあるが、教育熱心な親に育てられた庶民的な生徒が多い校風だ。
「そうだ!僕、いい事思い付いた!」
翔太がポンッと手を打った。
「いい事?」
「うん、二人一緒に入ればいいんだよ!半分ずつ払えば、一人50円で済むよ」
「おっ!それいいな!翔太、頭いい!」
「えへへ」
翔太は得意げに笑う。直矢と翔太は脱衣所で服を脱ぎ、コインを入れて、個室に入った。
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