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直矢がこんな思いを巡らせているというのに、翔太は無邪気に笑いながら、
「後ろ、洗い合いっこしよう!」
と直矢の頭と背中に石鹸を擦り付けてくる。石鹸の香りなのか、翔太本人から発せられるものなのか、なんだかいい匂いが漂ってくる。
「…翔太っ!ちょっ…待っ…!」
背中に翔太の体温を感じ、体は一層熱くなり、息をするのが苦しくなる。
「直矢、大丈夫?お腹痛いの?」
心なしか前屈みになっている直矢に対して、翔太は心配そうに、尋ねた。
「い、いや、ちょっと湯当たりしちゃったみたいで…」
「え?!シャワーで?!大丈夫?」
「あ、ああ。悪いけど、俺、先上がるわ」
そう言って直矢は、後ろを向いたまま、手早く洗い残した部分を洗い、シャワーで洗い流すのもそこそこに、心配そうな翔太を残してシャワー室を後にした。
脱衣所で素早く体を拭き、衣類を身に付け、廊下に出る。脱衣所の入り口の前で、心を落ち着かせようとしながら、翔太を待った。
「直矢、大丈夫?」
程なくして、翔太が出てきた。とても心配そうな顔をしている。
「うん、もう大丈夫だよ」
そう言って、二人で部屋に向かって歩き出した。
まだ体から熱が、抜け切らない。
本気で心配してくれる翔太に対し、直矢は後ろめたさを覚えた。
「よかった!はぁー、今日は疲れたからよく眠れそうだ」
翔太が伸びをしながら言った。
「ああ、そうだな」
直矢もそう言ったが、心の中では、
(今夜は中々眠れそうにないな…)
と思うのだった。
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