第8話 テスト勉強

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「だめだー!全然わかんないっ!」 翔太は机の上に教科書を投げ出し、椅子の背もたれに体を預ける。 「えーと、この問題は、これをこうして…あれ?違う」 隣に座っている直矢も、かなり苦戦している様子だ。 中間テストが迫り来る、ある日の放課後の事だった。ここは、校舎の外れにある第二理科室の奥にある、理科準備室ーー生物部が専ら部室として使っている部屋だ。室内には、大きな机が一台と、それを囲むような形で椅子が数個置いてあり、壁の至る所に、虫や植物の標本が飾られている。そして、翔太が今座っている場所から見て、ちょうど左手の壁際に、少し大きな水槽が置いてあり、その中に「彼女」はいた。蛸の八重子さんだ。夜行性のため眠っているのか、今は水槽内にある壺の中に身を潜め、じっと動かない。 騙されるような形で入部したのはいいが、八重子さんの世話はすべて奥戸蓮先輩がやっているし、特にすることもなく、二人はいつもここで、適当に時間を過ごしていた。今日はテストが近いということで、こうして勉強しているのだが、難しくてなかなか進まないのである。 「ただいまー!」 声が聞こえたと同時に、ガチャリと扉が開いた。海へ行くと言って出掛けていた、蓮先輩が戻ってきたのだ。
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