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翔太は、先輩の姿を見て、目のやり場に困ってしまった。学校の体操着の短パンに白いTシャツを着てはいるが、頭からつま先まで、全身びしょ濡れだった。白いTシャツは肌に張り付き、その褐色の肌が透けて見え、乳首の形までくっきりと分かる。手にはバケツを下げていて、中には小さな貝やサワガニが入っていた。
蓮先輩は、部屋に入ると濡れたTシャツと短パンを脱ぎ、いつものピチピチの競泳パンツ一枚になり、タオルで体を拭いた。そして、水槽に近づくと、
「八重子さんご飯だよー」
と言って、採ってきたばかりのバケツの中身をバラバラと入れる。すると八重子さんは、壺の中からにゅらにゅらと出てきて、嬉しそうにそれらを捕食する。その光景は余り見たくなかったので、翔太は目を逸らした。
「お、勉強してるのか?」
蓮先輩は、競パンだけ履いた姿で、二人が解いている問題を覗き込む。フェーン現象により、この時期本州より気温が高くなる日もあるが、まだ海水は冷たいはずだ。それなのに、先輩は寒がっている様子はなく、服を着る気もなさそうだ。慣れというのは恐ろしいもので、部室内で蓮先輩が競パン姿でいても、もはや違和感を感じなくなってしまった。
「先輩、理科得意でしたよね?この問題解ります?僕も直矢も解けなくて…」
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