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「ごめん!俺、今日花壇当番だから先行くわ。サボったら智が怖いから」
「うん、わかった」
直矢は制服の紺色のブレザーをさっと羽織り、鞄を掴むと、慌ただしく出て行った。
学級花壇の世話をする当番が、順番に回ってくるのだ。智は普段は大人しいのだが、花の事と光希の事になると、人が変わったように怖くなる。
翔太は急いでワイシャツのボタンを留め、ズボンを履くと、ある重大なことに気付いた。
(どうしよう…一人じゃネクタイ結べない!)
とは言っても、直矢はいないから自分でやるしかない。翔太は鏡の前で格闘した。あまり時間は掛けられない。
(うーん、なんか変だけど、ま、いっか)
早くしないと遅刻してしまう。翔太は慌てて部屋を飛び出した。
翔太は寮を出て、校舎への道を走った。だんだん校舎に近付いて来ると、何だかいつもと様子が違うことに気がついた。
(あ!今日は頭髪服装検査の日だ!)
翔太は思い出した。毎回テストの後には、緩んだ気を引き締めるため、頭髪服装検査をやるんだった。
校舎の入り口の前には、風紀委員長の中川浩志郎先輩と生徒指導の加藤憲明先生が、目を光らせながら構えている。
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