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少しでも学園の風紀を乱す者には容赦なく、特に制服の着方に関しては厳しいと有名な、六年三組の中川浩志郎先輩の制服姿は今日も完璧だった。まるで、制服カタログのモデルのようだ。制服を着崩す生徒も多い中、逆にそれが格好良くさえ思えてくるのは、スタイルが良く、その黒い短髪が清潔感を与え、彼にとても良く似合っているからだろう。翔太は何か注意されないか、ドキドキしながら入り口へと歩みを進めた。
「翔太!」
ビクンッ!と翔太が飛び上がる。声を掛けてきたのは、中川先輩の方だった。
「何だそのネクタイは!」
「す、すみません!今日はちょっと、時間がなくて…」
いつも友達にやってもらってるなんて、ちょっと言えない雰囲気だ。
「まったく、どこをどう結んだら、こうなるんだ」
学園一美しいネクタイの結び目を誇る中川先輩が、呆れながら翔太の複雑に絡み合ったそれに手を掛ける。
「まあ、でも捕まったのが俺でよかったと思え」
「え?どういうことですか?」
翔太が先輩を見上げると、彼は目線を移しながらこう言った。
「ほら、あれを見ろ」
先輩の目線の先を見ると、光希が生徒指導の加藤先生に捕まっているところだった。
「君、ダメだよ。髪をそんな色に染めちゃ」
先生は、ニヤニヤしながら光希の髪に触れる。
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