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「先輩、あの…あれって行き過ぎた指導ってやつでは…」
翔太は先生に聞こえないよう小声で言った。
「まぁな、でも、あれのお陰でこの学校には髪を染める生徒は一人もいない。やっぱり制服には自然な髮が一番だな」
先輩にとっては見慣れている光景らしく、特段気に留める様子もない。ただ黙々と翔太のネクタイと戦っている。
そうしている間に、加藤先生は、光希のパンツのゴムを引っ張り中を覗き込むと、ニヤニヤしながらしばらく眺めていた。そしてやがて、満足げな顔をして、
「もういいよ。行きなさい」
と言って、光希を解放した。光希はズボンを直すと、何ごともなかったかのように、
「お先にねー、翔太」
と翔太に手を振って行ってしまった。
「可愛いんだけど、素直過ぎてつまんないなぁ」
加藤先生が呟いているのが聞こえたような気がするが、気のせいだろうか。
ちょうどその時、
「浩ちゃーん!何やってるの?」
と元気な声が聞こえてきた。見るとそこには、中川浩志郎先輩のルームメイト、七瀬爽介先輩がいた。
「おはようございます!七瀬先輩」
翔太が挨拶する。
「おはよう!翔太」
七瀬先輩がにっこりと微笑むと、周りの空気が浄化され、爽やかになっていく。さすが、全校生徒の人気者だ。中川先輩と同じ六年生だが、童顔の為か実年齢より幼く見える。
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