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「爽介!何だその格好は!」
中川先輩が怒るのも無理はない。七瀬先輩の服装は、翔太よりも酷いものだった。ワイシャツのボタンは掛け違え、裾はズボンからはみ出し、ネクタイは翔太に負けないくらい変な結び方である。
「浩ちゃんが先行っちゃうから、一人で着られなくて…」
「まったく!最上級生がそれじゃあ、後輩に示しがつかんだろ!」
そう言いながら、中川先輩は七瀬先輩の服装を正す。あっと言う間に美しく整った制服姿が出来上がった。
「じゃあな!浩ちゃん、またあとでねー!」
七瀬先輩は手を振りながら、校舎の入り口へと走って行った。
すると急に、中川先輩は真顔になってこう言った。
「翔太…抜いてもいいか?」
「え?」
「すまん…俺の力不足だ。俺のポリシーに反するが、もういっそのこと、輪っかのまま頭からスポッて抜いてしまおう」
「わ?!何ですかこれ!」
翔太が胸元を見ると、そこには明らかに、先ほどよりも複雑怪奇なものと化したネクタイがあった。確かにこのままでいるよりは、何もない方がよっぽどいい。翔太に異論はなかった。
中川先輩がネクタイの首周りの部分を持ち、引き上げる。だが、耳の所で突っかかり、それ以上は上に行かない。
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