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「痛いっ!先輩、痛いですっ!」
「仕方ない。元に戻すか」
先輩は、今度は下に引っ張るが、翔太の細い髪がネクタイと絡まってしまい、引っ張られると髪の毛が抜けそうになる。
「痛たたたっ!痛い!痛いよぉ!」
翔太は目に涙を浮かべて訴える。
「仕方ない。このままにして置くしかないか」
先輩は諦めきった顔でそう言った。
輪になったネクタイは、ちょうど翔太の耳の所で固定され、それはちょうど、酔っ払って頭にネクタイを巻き付けている、サラリーマンのような状態だった。
「えー!?ちょっとこれはないでしょ、先輩!」
こんな姿で校内を歩いたら、みんなの笑い者になること間違いなしだ。そんなの恥ずかしくて絶対嫌だ。
翔太がそう思っていると、
「ぎゃははははっ!翔太!何だよその頭っ!」
変声期の少年特有の掠れたような笑い声が聞こえ、見るとそこにはお腹を抱えて笑い転げている奥戸蓮先輩の姿があった。
「もうっ!そんなに笑わなくてもいいじゃないですか!」
翔太が頬を膨らませていると、
「君、人のことを笑っている場合かな?」
と加藤先生がニヤニヤしながら蓮先輩に近づいていく。
「げっ!加藤先生!」
「蓮、髪を染めたらダメだとあれほど言ってるじゃないか」
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