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「一体どこをどうやったらこうなるんだ?!」
そう言いながら、直矢は手際良く頭に絡みついたネクタイを解き始める。クラスのみんなが見守る中、あっと言う間にそれは解けた。わっとみんなから歓声が上がる。そして今度は、それを美しく結び直した。
「はい出来た」
「ありがとう!やっぱ直矢がいないとダメだよ、僕」
「ば、ばか!人前でさらっと恥ずかしいこと言うな!」
直矢は照れくさそうに頬を赤らめる。
ずっと二人の様子を見ていた中川先輩は、あんぐりと口を開け、ひどく驚いた顔をしていた。
「な、直矢!どうやって解いたんだ?!俺は今まで何人もの生徒の服装を正してきた。だがこんなに手を煩わされたのは、こいつが初めてだ!」
先輩は直矢に詰め寄る。
「いえ、俺はただいつも通りに…」
「いつも通り…そうか、なるほどな」
中川先輩は腑に落ちたというような顔で頷いた。そして翔太に向き直る。
「翔太、あまりルームメイトに頼ってばかりいてはダメだぞ。六年生になっても一人でまともに制服も着られないやつだっているんだからな」
そう言い残すと、中川先輩は自分のクラスへと戻って行った。
その日の授業は、テストの返却と解説がメインだった。英語、数学、国語、社会はどれもぎりぎり平均点を超えていて、翔太はほっとした。小学校での成績は結構良い方だったのに、さすがは名門進学校と言われているだけあり、授業に付いて行くのが大変だった。
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