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その実習も今日で終わり、連日の緊張感から少しだけ解放された。
実習中は、医療現場の緊張感だけではなくて、いつ指導医から質問を浴びせられるかと皆常にビクビクしている。
講義で習っているだろう、と言われても、覚えなくてはならないことは途方もなく大量にあって、たとえ知識としてそれらを覚えていたとしても、実際の臨床の現場に入ると、それらを基にしてあらゆる可能性を考えていかねばならず、医師からの質問に明快に答えられる者はほとんどいない。
沢山いるスタッフの人達の前で「もう少し勉強しておきなさい」と怒られるだけなのだ。
その上、実際の医療の現場では、医学生などという者は「邪魔な者」以外の何者でもない。
そこに存在し、スペースを潰しているだけでも迷惑で、たまに滅菌した医療機器を手で触り台無しにしてしまうという失態もやらかしてしまう本当に邪魔な存在なのだ。
医師は皆その道を通ってきているので、比較的寛容なのだが、看護師などのコ・メディカル(医師や歯科医師の指示の下に業務を行う医療従事者)からは、とても冷たい視線を浴びせられることになる。
昨日も医療事務の女性が、集団で歩いていた僕達の中を「じゃまじゃまじゃまじゃま」と右手をひらひらさせながら、通り過ぎていった。
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