いち

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そんな毎日のおかげで、病院にいる間は、さとみさんのことを思い出さずにすんだ。 夜も、何かをする暇もなく、何かを思う暇もなく、思い出してもすぐに眠ってしまう毎日で。 だが今日、病院を出た瞬間、緊張から解放されたせいなのか、邪魔者扱いされすぎたせいなのか、さとみさんに会いたい、という気持ちが胸の中からじわじわと湧き出してきて。 今日会えるはずもないのに、友人からの「飲みに行こうぜ」という誘いも断った。 ふらふらと、おばちゃんのやっている定食屋に向かう。
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