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振り向くとそこには、星空のような青い色をした車がゆっくりと動いていて。
下ろされた窓の下の方に、さとみさんの小さな顔があって。
「おかえりー」と言いながら右手を振って「気を付けて帰るんだよー」と言い残し、そのまま行ってしまおうとしている。
「ちょっ、ちょっと……」
僕は反射的に駆け出して、青い車に追いすがった。
キッという音がして、さとみさんが車を止めた。
「どうしたのよ、危ないじゃない」
「だって……」
「だって、って?」
「だって、そのまま行ってしまいそうだったから……」
「うん、それは……、そうだね。そのつもりだった」
「どうして?」
「えっ?」
あぁ、そうなんだよ……。
さとみさんは決して隠れていたわけでもなく、連絡を絶っていたわけでもなく、おそらく、この公園にわざと来ないようにしていたわけでもない。
ただ単に、普通に毎日を送っていて、たまたま僕と会わなかった、というだけなんだ。
そりゃあ「どうして?」と言われたら「えっ?」ってなるよな……。
「いや……、あの……、連絡先を教えてもらえませんか? あっ、もちろん電話は掛けないようにします。それに頻繁にメッセージを送ったりも絶対にしませんから……」
それを聞いたさとみさんは、僕から目線を外してしまった。
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