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今度は、さとみさんの横顔が少しでも見えるよう、左の後部座席に座った。
海だと聞いていたのだが、車は上り坂を力強く駆け上がってゆく。
シートベルトをしていても、左右に振られてしまう程力強く。
「えっと、さとみさん、海を見に行くんですよね?」
「そうだよ。あっ、蓮は車酔いとか大丈夫?」
「はい、それは」
「よーし、じゃあしっかり掴まっていてね」
さとみさんはそう言って、アクセルを踏み込んだ?
右に左に、スキール音を立てながら山道を駆け上がってゆく。
一見普通のセダンなのかと思ったのだが、そう言えばタイヤがやけに太かったような。
振り向くと、トランクの上には、羽のようなスポイラーも付いている。
時々「えっと……、このままのスピードで、こんなスピードのままでカーブに入っていくのですか?」と、ツッコミたくなるのだが、それを言葉にする余裕などどこにもなかった。
さとみさんの横顔はずっと少し笑っていた。
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