いち

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今度は、さとみさんの横顔が少しでも見えるよう、左の後部座席に座った。 海だと聞いていたのだが、車は上り坂を力強く駆け上がってゆく。 シートベルトをしていても、左右に振られてしまう程力強く。 「えっと、さとみさん、海を見に行くんですよね?」 「そうだよ。あっ、蓮は車酔いとか大丈夫?」 「はい、それは」 「よーし、じゃあしっかり掴まっていてね」 さとみさんはそう言って、アクセルを踏み込んだ? 右に左に、スキール音を立てながら山道を駆け上がってゆく。 一見普通のセダンなのかと思ったのだが、そう言えばタイヤがやけに太かったような。 振り向くと、トランクの上には、羽のようなスポイラーも付いている。 時々「えっと……、このままのスピードで、こんなスピードのままでカーブに入っていくのですか?」と、ツッコミたくなるのだが、それを言葉にする余裕などどこにもなかった。 さとみさんの横顔はずっと少し笑っていた。
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