いち

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翌日もさとみさんは、猫に餌をあげていた。 今日はカリカリのキャットフードをポイッ、ポイッと弾き飛ばし、猫との距離が少しあった。 「あっ、蓮君!」 僕を見付けたさとみさんのその顔は、迷子になっていた子猫がようやく母猫を見付けた時のような、そんな表情をしていた。 「さとみさん、こんばんは」 僕はさとみさんに引き寄せられるよう、彼女の座るベンチに近付いた。 いや、今日の僕は最初から、さとみさんに会えることを期待して、この公園を歩いていたのだ。 年上なのに、守ってあげたくなるような、そんなさとみさんと会うために。
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