それから

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翌日には准教授の意識は戻って、その後軽い麻痺があったらしいのだが、懸命な介護とリハビリにより日常生活には支障がないまでに回復をした。 結局僕たちは誰も罪には問われなかった。 浮気相手である僕に、命を助けられてしまった准教授は「もう二度と会わないようにしてくれ」と言っただけで。 僕をナイフで傷付けた彼は、QT延長症候群と診断され今も治療を受けている。 あすみが臭う自分をマウスツーマウスまでして助けてくれたことに、とても驚き、そしてとても感謝していて、僕たちのところにやってきて深々と頭を下げてくれた。 だから「今から出頭します」と言う彼を宥めて、治療に専念して欲しいとお願いをした。 今回の話がもしも表に出てしまったら、と想像するだけでも恐ろしい。 もしもあすみがあの時に来てくれていなかったら、 おそらく、さとみさんは殺人罪で、僕は死体損壊遺棄罪で。 そして今、目の前の教壇で講義をしている准教授は、もうこの世にはいないのだ。
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