いち

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身長は百五十センチくらいだろうか少し低めで、腕も脚もほっそりとしているのだが、とても白くて柔らかそうで。 控えめな鼻が可愛らしさを、大きな瞳が隠された意思の強さを感じさせる。 だが基本、たいていいつも伏し目がちで薄幸な雰囲気が彼女を覆っている。 だからだろうか、まだほとんど話してもいないのに、この人の笑顔を見てみたい、そう思ってしまうのは。 駅前のはずれにあるそのお店は、勇気を出さないと入りづらい程、年季の入った佇まいのお店で、カウンターと小さなテーブルが一つあるだけの、とても小さなお店だ。 時間帯にもよるのだが、ほとんど他のお客さんと顔を合わせることがない。 メニューも日替わり定食と、うどんとどんぶり物が数種類あるだけで、おばあさんに近いおばちゃんが一人でやっている。 そんな寂れたお店なのだが、実習で疲れ果て、何を食べるか考えるのも嫌になる毎日で「日替わりを」と言って座れば、温かくておいしいものをほとんど待つこともなく食べることができる、僕にとってはとてもありがたいお店なのだ。
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