いち

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僕もビールを注ぎ返し「では……」と言ったものの次の言葉が出てこなくて「えっと何に乾杯しましょうか?」と。 それにクスっと笑ったさとみさんが「では、二人の出会いに」と言ってコップを持った右手を上げた。 僕は、初めて目と目がしっかり合って、ドギマギしてしまい「は、はい。出会いに」と言ってコップを空けた。 「おまたせ」と言って、おばちゃんが持ってきてくれた今日の定食は、小松菜のおひたしとヒジキの煮物、そしてキャベツとキュウリのサラダが添えられたアジフライだった。 そこに、ご飯と豚汁とお漬物が付いてくる。 「うわぁ、おいしいそう」 さとみさんはそう言いながら、メニューの張ってある壁を見直した。 「えっ、これで六百五十円?」 「ね、安いでしょ?」 ぶんぶんと音がしそうなくらい首を縦にふるさとみさんを見て僕は満足し、アジフライにかぶりついた。
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